経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の5S

経営資源の5S

5S というととかくモノや作業場所に対しての5S に焦点が当たりがちですが、5S を実践する中でまず自分自身の頭の中の5S がきちんと出来ていないと実際に行う5S の結果も良い結果が得られません。そのことから一人の人間を会社に置き換えた時にも同様の事が言えるのでないかと考えており、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の5S について個人的な見解を述べたいと思います。
モノに対する5S は既に在るものを対象にしがちですが、経営資源の5S は人間特有の能力である無から有を生み出す事象にまで対象を広げて考える事が出来ます。

経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報のそれぞれの5Sについて、要点を整理すると次のようになります。

(モノ・ヒト・カネ・情報の経営資源毎に5Sについて説明しています。本来経営資源はヒトが最初ですが、5Sとして比較し易いようモノを最初にしています。)

モノの5S

モノの5Sが基本中の基本ですし、この5Sにつきましては多くの本が出版されていますし、会社でも行っていると思いますので、ここでは細かく説明はせず、概要のみ記載させていただきます。

整理(Seiri)
(取捨選択)

必要なモノと不要なモノを分け、不要なものを捨てる。

整頓(Seiton)
(並べる、揃える、明示)

必要なモノすぐに取り出せるような置き場所、置き方を決め、表示を確実に行う。

清掃(Seisou)
(保守点検)

掃除をしてゴミ、汚れのないきれいな状態にすると同時に細部まで点検する。

清潔(Seiketsu)
(前の 3S を維持する)

整理、整頓、清掃を徹底して実行し汚れのないとされる状態を維持する。

躾(Shitsuke)
(習慣・ルール・仕組み)

決められた事を決められたとおりに実行できるように習慣づける。

5Sについては下記の本でわかりやすく書かれていますので参考にしてはいかがでしょうか?

ヒトの5S

経営資源の中で最も大切な資源であるヒト。重要であるからこそ5Sを徹底しなくては企業体そのものが健全でなくなります。
そうならないためにもヒトの5Sを徹底しましょう。

整理(Seiri)
(取捨選択)

必要な人材、不必要な人材、力量のある人材、力量のない人材を分ける。
採用試験や昇進昇格試験もこの判断に使う。
ヒトの集合体である組織も同様に考え企業目的に沿った組織を取捨選択する。

整頓(Seiton)
(並べる、揃える、明示)

企業の目的を達成するためには最大の資産であるヒトの強みを最大限発揮できるよう適材適所にヒトを配置し、職務権限を与え業務が
スムーズに運べるように組織を作る。
昇進・昇格・異動・降格・解雇もこの目的に合うよう行う。

清掃(Seisou)
(保守点検)

真摯な姿勢で公正に人事考課を行う。
また定期的に内部監査、外部監査を行い組織内の内部統制システムなどを是正する。
より企業価値を高められるようヒト、組織をPDCAでスパイラルアップする。
定期健康診断などで健康を維持する

清潔(Seiketsu)
(前の 3S を維持する)

組織もヒトも自然現象にならい秩序あるものから無秩序な状態へ変化するためそうならないよう倫理、ルールを作る。
健康で働けて社会に貢献することは充実した人生を送られ幸福感も得られる為、進んで健康増進を行う。

躾(Shitsuke)
(習慣・ルール・仕組み)

経営理念、倫理、ルールをしっかり守るよう教育する。
個の集合が家族、企業、社会、国を作っている。
最も基本の個の意識を高めることで全ての集合体の意識も高まる。
その状態になれば1+1=2でなく3にも4にもなる。

人事考課についてわかりやすく解説された下記書籍も是非参考にしてください。

また人事考課にポイント制を導入して離職率ダウンとモチベーションアップを図ったシステムについてはこちらで説明していますので、よろしければご覧ください。

カネの5S

企業活動の最終目的は社会貢献活動も含めた大きな目的もありますが、事業を継続していくことが基本です。
そのためには資金が必要で、事業活動で得るフリーキャッシュフローの最大化が重要です。
カネの5Sを実践することによりフリーキャッシュフローの最大化を意識することが出来ます。

整理(Seiri)
(取捨選択)

必要な費用・キャッシュインアウト、不要な費用・キャッシュインアウトを分ける。
製品や事業のライフサイクルを見極め、取捨選択を計画的に体系的に行う。
新規事業・新製品の企画立案を行う。
コストダウンの一策として不要な仕事を止める。
目的を再考し仕事そのものをカットすることで不要コストもカットできる。

整頓(Seiton)
(並べる、揃える、明示)

整理で選択した製品や事業でのフリーキャッシュフローの最大化、新規事業や新製品への投資、体系的廃棄を元に事業計画(単年、中
長期)を策定する。
利益はグループ外からのみ得られグループ内ではコストが発生するのみという原則を重視し利益獲得とキャッシュイン増大を図り企業
の将来を創造する。
目指す方向を揃え総合力を高める。

清掃(Seisou)
(保守点検)

立案した計画と実績を比較しマイナス差異がある場合はいかに達成するか確認しアクションを起こす。
比較は利益をベースに行う。
特に計画時に集中すべき分野としたものについては重要度を上げて確認する。
利益予測、資金予測を確認する。

清潔(Seiketsu)
(前の 3S を維持する)

企業体が健全な状態で目的達成に向かっているか、また業務執行や
内部統制が機能しているか、さらに成長するためより高度な基準を
満たしていけるか等を内部外部の監査を通してチェックする。

躾(Shitsuke)
(習慣・ルール・仕組み)

過去が現在を作り、現在が未来を創る。
結果管理で過去を見るのではなく、そこからどう未来を築くかとい
う予測管理が行えるよう仕組みを作る。

キャッシュフローについては下記書籍で詳しく解説されていますので参考にされてはいかがでしょうか?

情報の5S

情報化時代から既に情報時代となって久しいですが、情報の取扱いによる事故が相変わらず多いようです。
USBメモリ一つ紛失するだけで企業に大打撃を与えることもあります。
そんな事故や事件を未然に防ぐためにも情報の5Sも徹底しましょう。

整理(Seiri)
(取捨選択)

必要性や重要性、機密性、可用性によって情報を区分する。
文書保管期限での分類やパレート図(ABC)分析等統計手法を用いての分類をし必要な情報を絞る。

整頓(Seiton)
(並べる、揃える、明示)

必要な情報は可用性を鑑み必要とするヒトがすぐに使える状態にしておく。
情報の機密性に応じセキュリティを設定し可用性と機密性のバランスを取る。
情報の可視化と共有化を行い経営判断に役立てるようにする。

清掃(Seisou)
(保守点検)

会社内の情報は過去・現在・未来を繋ぎ企業価値を高める情報を重要とする。
企業価値を高める情報とは顧客を始めとした取引先やステークホルダーが当社を必要としている情報である。この情報を保持する。

清潔(Seiketsu)
(前の 3S を維持する)

情報は機を失うと陳腐化する。
情報の正確性も吟味し企業価値創造に繋げる。

躾(Shitsuke)
(習慣・ルール・仕組み)

情報管理規定や文書管理規定、特許情報管理など企業の肝となる情報を全社員がその扱う権限において正しく扱えるよう教育する。

情報管理は非常に重要です。
情報管理については下記書籍で詳しく解説されていますので、参考にされてはいかがでしょうか?

まとめ

TECCI
TECCI

「経営資源の5S」、いかがだったでしょうか?

5Sが全く行き届いていない状況ではとにかく整理・整頓・清掃の3Sをまず行うしかありませんが、ある程度5Sが進んだ段階では躾が一番重要だと思います。

理由としては躾で整理・整頓・清掃・清潔が根付いていれば自ずとその基準が向上していき整理整頓された環境が常に維持できるだけではなく、より機能的で効率的な状態を目指そうという上向きの意識がより好状態を作り上げるからです。
以降は余談になります。

躾ではいわゆるコミュニケーションが重要であり、コミュニケーションというと伝える側の視点からに焦点が当たりがちですが、受け側が理解して初めて意思疎通が図れコミュニケーションが成り立つと思います。
海外での生活を通して実感したことは、常識・文化・歴史・宗教・倫理・価値観が異なる中での共通項は何であるか、自分の意図する常識は何か、何に基づいているかという基本的な思想をまず自分の中で咀嚼し、その後伝えるべきヒトの持っているであろう常識や価値観を想像したり一問一答したりし、それに合わせたコミュニケーションを構築しないと伝える側からは「既に伝えた」となり、受け側からは「よくわからなかった」というような言った言わないの話になってしまいます。
この辺は日本人同士であっても性格・経験・地域・世代等によって考えも異なり同様な事が言えるかも知れません。
また5現(現場、現物、現実、現時、現人)は非常に重要で、まさしく「百聞は一見にしかず」で、ある事象を伝える場合、伝える側が事象を正確に把握し、それを正確に言葉にし、相手に正しく伝えないとその後の対応にも影響が出ますし、ヒトからヒトへの伝言ゲームの結果情報は事実を正確に伝えるどころか歪曲されるおそれもあります。
ですから聞く側も言葉や報告書のみで理解するのではなくとにかく自分で事実を把握するという源流思考が問題解決、未来創生に必要だと思います。

 

 

 

 

コメント