30年遅れで始まった「夢の21世紀」|AI・ロボット・医療が変え始めた未来

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前回の記事では、子どもの頃に思い描いていた「夢の21世紀」と、2026年の現実について考えてみました。

21世紀になれば、ロボットが人間を助け、病気の多くが克服され、自動車は空を飛び、宇宙旅行も当たり前になる。

そんな未来を想像していました。

しかし21世紀になって26年が経過しても、病気はなくなっていません。交通事故も戦争も自然災害による被害もあります。

「夢の21世紀」は来なかった。

長い間、そう思っていました。

ところが、ここ1〜2年で少し考えが変わってきました。

もしかすると未来は来なかったのではなく、

私たちが想像していたより30年ほど遅れて、ようやく始まったのではないか。

そう感じるほど、いくつかの技術が急速に進歩し始めています。

未来は少しずつではなく、突然やってくる

技術の進歩というと、毎年少しずつ便利になっていくイメージがあります。

しかし実際には、ある技術と別の技術が結びついた瞬間に、それまで長い間変わらなかったものが一気に変化することがあります。

スマートフォンが分かりやすい例です。

携帯電話、インターネット、デジタルカメラ、GPS、タッチパネル、半導体など、それぞれの技術は以前から存在していました。

それらが一台の端末に集まったことで、電話は単なる「話すための機械」ではなくなりました。

そして今、同じようなことがAIとロボットの世界で起き始めているように思います。

AIは「検索する道具」から「一緒に考える存在」へ

数年前まで、コンピュータに何かを尋ねるときは検索エンジンを使うのが当たり前でした。

人間がキーワードを考えて入力し、検索結果から必要なWebサイトを探し、その内容を読んで判断する。

ところが生成AIの登場によって、その関係が大きく変わりました。

今ではAIに普通の言葉で質問できます。

文章を書かせることもできます。

長い資料を整理させたり、プログラムを作らせたり、画像を作ったり、アイデアについて相談したりすることもできます。

重要なのは、AIが単に「答えを表示する機械」ではなくなってきたことです。

人間と会話しながら、何かを一緒に作る存在へ変わり始めています。

これはコンピュータの歴史の中でも、かなり大きな変化だと思います。

AIがロボットの「頭脳」になったとき何が起きるのか

AIだけなら、基本的にはデジタルの世界で仕事をします。

文章を作る。画像を作る。データを分析する。プログラムを書く。

しかし、そのAIがロボットと結びつくと話が変わります。

AIが「頭脳」となり、ロボットが「身体」になるからです。

これまでの産業用ロボットは、決められた場所で決められた動作を正確に繰り返すことを得意としていました。

一方、これからのロボットには、周囲の状況を認識し、自分で判断し、異なる作業に対応する能力が求められます。

人間から、

「この箱を向こうへ運んで」

と言われたら、箱を認識し、持ち上げ、障害物を避けながら目的地まで運ぶ。

こうしたことが普通にできるようになれば、ロボットは工場の一工程だけで働く機械ではなくなります。

倉庫、店舗、ホテル、病院、建設現場、農場、家庭。

人間が活動しているさまざまな場所へ進出していく可能性があります。

人型ロボットが必要とされる理由

ロボットが人間と同じ形をしている必要はない、という意見もあります。

確かに、工場だけを考えれば、作業に最適化した専用ロボットの方が効率的でしょう。

しかし、私たちの社会を見渡してみると、少し事情が違います。

ドアの高さ、階段、机、椅子、工具、自動車、エレベーター。

現在の社会に存在するほとんどの設備は、人間の身体を前提に設計されています。

社会全体をロボット用に作り直すより、人間と同じ環境を利用できるロボットを作った方が早い。

そのため、AIを搭載したヒューマノイドロボットの進歩は、これから非常に大きな意味を持つ可能性があります。

自動車も「運転する機械」ではなくなるかもしれない

第1回では、自動車について、

「人を速く移動させる乗り物」ではなく、「人を安全に目的地まで移動させる仕組み」として設計していたらどうだっただろう。

と書きました。

AIと自動運転技術の進歩によって、ようやくその考え方に近づいてきたように思います。

人間がアクセルやブレーキ、ハンドルを操作することを前提にするのではなく、

「ここから、あそこへ行きたい」

と伝えるだけでよい。

そうなれば、自動車という言葉の意味そのものが変わります。

重要なのはエンジン性能でも最高速度でもなく、

安全に、確実に、人間を目的地へ運べるか。

ということになるからです。

空飛ぶ自動車が普及するより先に、「人間が運転しなくてよい自動車」が当たり前になる方が、現実的な21世紀の未来なのかもしれません。

医療では「治す」から「元に戻す」時代へ

子どもの頃に想像した未来には、「病気がなくなる」というものもありました。

もちろん、すべての病気がなくなる世界はまだ遠いでしょう。

しかし医療についても、これまでとは違う方向の進歩が始まっています。

その代表的なものの一つが再生医療です。

従来の医療では、病気になった臓器や身体の機能に対して、薬や手術などで治療することが中心でした。

ところがiPS細胞などを利用した再生医療では、失われたり傷ついたりした細胞や組織の機能を再び作る、あるいは取り戻すという考え方が現実の研究・治療へ近づいています。

さらにAIが医療に入れば、画像診断、創薬、治療法の選択などにも大きな変化が起こる可能性があります。

一人ひとりの身体の状態や遺伝情報、生活習慣などを分析し、その人に合った治療を選択する。

「病気になってから治す」だけではなく、

病気になる可能性を早く見つけ、発症する前に対応する。

そんな医療へ変わっていくかもしれません。

AIは農業や食料生産も変えていく

未来社会を考えるとき、派手なAIやロボットばかりに目が行きます。

しかし、人間が生きるうえで最も基本的なものは食料です。

農業にもAI、自動運転、ドローン、ロボットなどが入り始めています。

作物の状態をセンサーやカメラで確認し、必要な場所だけに水や肥料を与える。

雑草を判別して処理する。

自動運転の農業機械が作業する。

収穫をロボットが行う。

こうした技術が進めば、少ない人数でより多くの食料を生産できるようになるでしょう。

漁業でも、海洋データやAIによる漁場予測、自動化技術などが進歩していく可能性があります。

少子高齢化が進み、一次産業の担い手不足が問題になっている日本にとって、これは単なる生産性向上ではありません。

食料生産そのものを維持するために必要な技術になる可能性があります。

自然災害に対しても「人間が行かなくてよい」場所が増える

地震や津波、台風、洪水、山火事などの自然災害をなくすことはできません。

しかしAIとロボットの組み合わせは、災害への対応も変えていくでしょう。

人間が入れば危険な場所へドローンを飛ばす。

倒壊した建物へ小型ロボットを入れる。

大量のセンサー情報をAIが分析し、被害が大きい場所を特定する。

道路の寸断状況や避難所の混雑状況などから、最適な救援ルートを判断する。

将来的には、

「危険な仕事だからこそ、人間ではなくロボットが行く」

という考え方が当たり前になるかもしれません。

それぞれの技術がつながったとき、社会は大きく変わる

AI。

ロボット。

自動運転。

再生医療。

センサー。

ドローン。

これらを一つずつ見れば、「便利な新技術」に見えるかもしれません。

しかし重要なのは、これらが同時に進歩し、互いにつながり始めていることです。

AIが考え、ロボットが動く。

センサーが状況を把握し、AIが判断する。

AIが病気を発見し、新しい治療技術が身体を修復する。

自動運転とAIが、人間を安全に目的地へ運ぶ。

こうした技術が組み合わされたとき、初めて「未来社会」と呼べる大きな変化が起きるのではないでしょうか。

しかし、ここからが本当の問題になる

ここまで読むと、とても明るい未来が待っているように感じます。

AIとロボットが働いてくれる。

食料は少ない人手で生産できる。

自動車は自分で運転してくれる。

危険な仕事はロボットが担当する。

病気も今より治せるようになる。

私たちが子どもの頃に夢見た21世紀が、本当に30年遅れで始まったのだとすれば、素晴らしいことです。

しかし私は、ここでどうしても一つの疑問を持ってしまいます。

AIとロボットが人間の代わりに働くようになったとき、その人たちは何をして生活するのでしょうか。

100人必要だった工場が、AIとロボットによって10人で運営できるようになったとします。

企業にとっては大きな生産性向上です。

生産量が増え、コストが下がり、利益も増えるかもしれません。

では、必要なくなった90人はどうなるのでしょう。

すぐに、

「AIが働いてくれるのだから、人間は働かなくても豊かに暮らせる」

という社会になるのでしょうか。

私は、そんなに簡単には進まない気がしています。

「生きるために働くことを強制されなくなる社会」が訪れる前に、

仕事を失う人が増え、AIやロボットを所有する企業や人へ富が集中する時代が先に来る可能性があります。

夢の21世紀へ向かう道には、私たちが子どもの頃の未来予想図には描かれていなかった、大きな谷があるのかもしれません。

次回は、

「AIとロボットで、人間の仕事はどこまで必要なくなるのか」

について考えてみたいと思います。


この記事が、どこかで
「ためになるかもしれない」と思っていただけたら嬉しいです。

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