人は文章を書けなくなったのではない。文章を書く時間がなくなった。

スポンサーリンク

文章を書くための道具は、ずいぶん変わりました。

手書きだったものがワープロになり、パソコンになり、そして今ではAIが文章まで作ってくれるようになりました。

こうした変化を見ると、

「人間は自分で文章を書かなくなった」

と思う人もいるかもしれません。

でも、本当にそうなのでしょうか。

私はむしろ、少し違うように感じています。

人は文章を書けなくなったのではない。
文章を書くために使える時間がなくなった。

そして昔から私たちは、その時間を短縮するために、さまざまな道具を使ってきたのではないでしょうか。

年賀状を一枚ずつ手書きしていた時代

かつて年賀状は、一枚一枚手書きするのが普通でした。

宛名を書き、新年の挨拶を書き、場合によっては近況を書き添える。

10枚ならまだしも、50枚、100枚となれば大仕事です。

年末になると、

「そろそろ年賀状を書かなければ」

というのが、一つの恒例行事でした。

ところが、やがて印刷された年賀状が増えていきます。

住所録から宛名を印刷し、本文もまとめて印刷する。

「手書きじゃない年賀状なんて味気ない」

そんな声もあったと思います。

それでも年賀状印刷は広まりました。

なぜでしょう。

年賀状を書く能力を失ったからではありません。

一枚一枚書く時間を減らしたかったからです。

そして大切な人には、印刷された年賀状に、

「今年もよろしく」
「また飲みに行きましょう」

などと一言だけ手書きで添える。

全部を機械に任せるのではなく、機械に任せる部分と自分で書く部分を分ける。

考えてみれば、これも立派な「人と機械の分業」だったのでしょう。

ワープロやパソコンは「文章を書く力」を奪ったのか

ワープロが普及し、その後パソコンで文章を書くようになると、文章作成はさらに楽になりました。

間違えたら消せる。

文章の途中に一文追加できる。

段落を丸ごと移動できる。

同じ文章を何度でも使える。

コピー&ペーストもできる。

今では当たり前ですが、手書きの時代から考えれば画期的なことばかりです。

手書きなら、最後の方で大きな間違いに気付けば、場合によっては最初から書き直しです。

ワープロなら、その部分だけ直せばいい。

では、ワープロを使うことで、人間の文章力は必要なくなったのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。

何を書くかを考えるのは人間です。

ワープロやパソコンが助けてくれたのは、「文章を完成させる作業」の部分でした。

文字を書く。
漢字に変換する。
修正する。
レイアウトを整える。
印刷する。

つまり私たちは、文章を考えることそのものよりも、その周辺にあった作業を機械に任せるようになったのです。

「直子の代筆」に驚いた時代

さらに面白いソフトが登場しました。

「直子の代筆」です。

手紙などの目的や状況に合わせて、文例を利用しながら文章作成を支援してくれるソフトでした。

これはワープロとは少し違いました。

ワープロは基本的に、

「あなたが書いた文章を形にします」

という道具です。

一方、代筆ソフトは、

「どう書けばいいのかも手伝います」

という領域に一歩踏み込んできました。

手紙、お礼、お詫び、案内。

内容は頭の中にある。

でも、

「最初の一文はどうしよう」
「この言い方では失礼ではないだろうか」
「もう少し丁寧に書きたい」

と悩む。

そんなとき、文例があるだけで文章を書く時間は大きく短縮できます。

これも、

「文章を書けない人のためのソフト」

だけではなかったと思います。

自分でも書ける。でも時間がかかる。しかも雑には書けない。

だから道具を使う。

ここが重要なのではないでしょうか。

そしてAIが文章を書くようになった

そして現在、生成AIが登場しました。

今度は文例を選ぶだけではありません。

「取引先へのお詫びメールを書いて」
「この文章をもう少し柔らかくして」
「Facebookに掲載する文章にして」

と頼めば、AIそのものが文章を作ってくれます。

ワープロが「書く作業」を助け、代筆ソフトが「書き方」を助け、生成AIはついに「文章を組み立てるところ」まで手伝うようになりました。

これは大きな変化です。

しかし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。

AIが文章を書くようになったからといって、人間が考えなくてよくなったわけではありません。

「明日の会議は14時です」だけなら簡単だけれど

たとえば、

「明日の会議を14時に変更してください」

これだけなら、多くの人がすぐに書けます。

しかし、仕事で扱う文章はそれだけではありません。

取引先へのお詫び。
社員へのメッセージ。
顧客への案内。
会社のFacebookへの投稿。
新しいサービスの紹介。
お願いをするときのメール。
断らなければならないときの文章。

内容そのものは分かっているのに、

「どう書くか」

に時間を取られることがあります。

特に経営者や管理職になれば、文章は単なる文字ではありません。

その人自身や、会社を代表する言葉になることがあります。

だから、

忙しいから適当に書いた、では済まされない。

誤字が多い。

ぶっきらぼうに見える。

意図とは違う意味に受け取られる。

敬語がおかしい。

相手を不快にさせてしまう。

たった一通の文章が、本人や会社の印象につながることさえあります。

時間を短縮しても、文章の品質は落としたくない

だから私は、AIによる文章作成の価値は単なる「時短」ではないと思っています。

目指したいのは、

時間を短縮しながら、文章の品質を落とさないこと。

ここです。

自分で30分かければ書ける。

でも、その30分を10分、5分にできたらどうでしょう。

空いた時間で、本来その人にしかできない仕事ができます。

経営者なら経営について考える。

営業担当者なら顧客と話す。

技術者なら設計する。

そして文章についても、人間は「何を伝えるのか」に集中する。

文章として整える部分をAIに手伝ってもらう。

これは「人間が文章を書かなくなる」という話とは、少し違うのではないでしょうか。

「プロンプト不要」を最初に説明しなくてもいい

私はLinguaWriterを開発する中で、「プロンプトを意識しなくても使える」ことを一つの特徴として考えてきました。

生成AIを使いこなすには、AIに対して適切な指示を与えることが重要です。

その指示を一般に「プロンプト」と呼びます。

でも、最近になって思うことがあります。

AIをあまり使ったことがない人に、

「プロンプトを書かなくても大丈夫です!」

と言っても、

「プロンプトって何?」

となってしまうのではないか、と。

知らなくてもいいものを、わざわざ説明してから、

「それを知らなくても大丈夫です」

と言うのも少し変な話です。

それなら、

書きたいことだけ入力してください。
文章に整えるところはLinguaWriterがお手伝いします。

これでいい。

使ってみて、

「なぜこんな簡単な入力だけで文章になるの?」

と思ったときに、その理由を説明すればいいのです。

Writing Profileは表に見えない「文章の設計図」

LinguaWriterには「Writing Profile」という仕組みがあります。

ブログを書くのか。

ビジネスメールを書くのか。

SNSへ投稿するのか。

どんな立場で、誰に向けて、どのような文章を書くのか。

そうした文章作成に必要な条件を、あらかじめWriting Profileとして用意しておきます。

利用者は難しいAIへの指示を一から考える必要はありません。

書きたいテーマ。

伝えたい要点。

結論。

そして必要なら追加の指示。

それらを入力すれば、Writing ProfileをもとにAIが文章として整える。

つまり「プロンプト不要」は、LinguaWriterの表側に掲げる言葉というより、

簡単に使えるようにするための裏側の仕組み

なのだと思うようになりました。

年賀状からAIまで、やっていることは意外と同じ

こうして振り返ると、面白いことに気付きます。

年賀状印刷では、一枚一枚書く作業を機械に任せました。

ワープロやパソコンでは、清書や修正、編集を機械に任せました。

「直子の代筆」のようなソフトでは、文章表現や文例をコンピューターに助けてもらいました。

そして生成AIでは、文章を組み立てるところまで機械が手伝うようになりました。

技術は大きく変わりました。

でも、人間が道具に求めていることは、意外と変わっていないのかもしれません。

文章を考える力はある。
でも、文章に仕上げる時間を減らしたい。

そしてもう一つ。

時間を減らしても、雑な文章にはしたくない。

考えるのは人。文章に整えるところをAIが手伝う

AIが文章を書く時代になりました。

これからAIはもっと進化するでしょう。

音声で話した内容が、そのままメールになり、報告書になり、ブログになり、SNSへの投稿になる。

そんなことも、特別ではなくなっていくと思います。

だからといって、人間が何も考えなくていい世界になるとは思いません。

誰に伝えるのか。

何を伝えたいのか。

なぜ伝えたいのか。

最後に何を分かってほしいのか。

そこを決めるのは、やはり人間です。

考えるのは人。
文章に整えるところをAIが手伝う。

年賀状を一枚ずつ手書きしていた時代から、ワープロ、代筆ソフト、そして生成AIへ。

振り返ってみると、LinguaWriterで私がやりたかったことも、その長い流れの先にあるのかもしれません。

人から「書く力」を奪う道具ではなく、

人が「考えること」に、もっと時間を使うための道具。

それが、これからの文章作成ツールの役割なのではないでしょうか。


この記事が、どこかで
「ためになるかもしれない」と思っていただけたら嬉しいです。

コメント