
コミュニケーションとは何か。日常的に行っているにもかかわらず、これほど難しく、誤解が生まれやすいものはありません。今回はその本質について、実体験も交えながら考えてみます。
コミュニケーションの語源
コミュニケーション(Communication)の語源は、ラテン語の「communis(共有の、共通の)」や「communicare(分かち合う)」に由来します。
つまり本来の意味は、
「伝えること」ではなく「分かち合うこと」
です。
情報を一方的に伝えるのではなく、価値観や感情を共有し、相互に理解し合うプロセスこそがコミュニケーションの本質です。
なぜコミュニケーションはすれ違うのか
多くの場合、伝達する側は「相手に理解してほしい」と思って話しています。
しかし現実には、
- 「私は言いました」
- 「伝えました」
- 「説明しました」
といった、一方通行のコミュニケーションが多く見受けられます。
同じ日本人、同じ言語であっても、コミュニケーションは簡単には成立しません。
受け手の理解は4段階に分かれる
話を聞いた側の理解度は、大きく次の4つに分かれます。
- ① 理解できた
- ② 部分的に理解できた
- ③ ほとんど理解できていないが質問できない
- ④ 全く理解できていない
特に②や③のケースは非常に多いです。
専門用語を多用する説明や、集団での研修・会議などでは、理解していなくても質問できない空気が生まれます。
さらに問題なのは、「理解しました」という返答です。
これはあくまで受け手の自己申告であり、その正確性は保証されません。
確認すればよいのかという問題
では一人一人の理解度を確認すれば良いのでしょうか。
現実には、それは非現実的です。
この時点でコミュニケーションは、
「簡単な行為のようで、極めて難しいもの」
であることが分かります。
海外で痛感したコミュニケーションの難しさ
私が海外で6か国の人たちと仕事をしていた時、この問題を強く実感しました。
人種、言語、宗教、文化、歴史。
その違いは想像以上に大きく、共通の前提がほとんどありません。
例えば「数字」です。
日本では数字といえば0〜9のアラビア数字を思い浮かべますが、それが常識ではありません。
実際に作業記録に見慣れない文字があり確認したところ、ミャンマーの数字で書かれていました。
この経験から、社内では数字はアラビア数字で統一することにしました。
専門用語はコミュニケーションを壊す
技術者がPPM(百万分率)で記録を作成していたこともありました。
しかし現場の作業者はPPMを理解していませんでした。
そのため、
10.0000500 ± 50PPM
と書かれていても、実際には判断ができません。
そこで、誰でも理解できる「実際の数値範囲」に修正しました。
これは単なる表記の問題ではなく、
「相手の理解に合わせる」という本質的な問題
です。
言葉以外のコミュニケーション
言葉だけでは伝わらない場合も多くあります。
そのため、
- 写真
- 図
- 実物
を活用することで、理解度を大きく高めることができます。
これは言語の壁を超える有効な手段でもあります。
コミュニケーションに正解はない
ここまで見てきたように、コミュニケーションには決定的な正解がありません。
相手によって最適な方法は変わり、状況によっても変わります。
だからこそ重要なのは、
「より良くし続ける姿勢」
です。
最後に
コミュニケーションとは、単に伝えることではありません。
相手と分かち合い、理解し合うことです。
そのためには、
- 相手の立場を考える
- 共通の前提を作る
- 分かりやすく伝える工夫をする
- 意見を言いやすい環境を作る
こうした積み重ねが必要になります。
完璧な方法はありません。
だからこそ、試し、修正し、改善し続ける。
その姿勢こそが、コミュニケーションを成立させる唯一の方法なのかもしれません。




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