
高校時代、親友と話をしていると、何度かこんなやり取りがありました。
友人が、
「それは無理だよ」
と言う。
そして、その後には「なぜ無理なのか」という理由がいくつも続きます。
それを聞いていた僕は、
「自分の物差しで測るな」
と言いました。
高校生の頃の話ですから、何か深い哲学があって言った言葉ではありません。
おそらく、
「君にできないからといって、他の人にもできないとは限らないだろう」
くらいの意味だったのでしょう。
ところが社会人になり、さまざまな経験をしてから、この言葉を自分自身に問いかけることが何度もありました。
「自分も、自分の物差しで測っていないだろうか?」
100mを9秒台で走れと言われたら
例えば僕が、
「100mを9秒台で走ってください」
と言われたとします。
答えは簡単です。
「それは無理です」
僕自身の身体能力では、どう考えても無理な話です。
しかし、世界を見れば100mを9秒台で走れる人は実際に存在します。
つまり、
「僕にはできない」ことと、「できない」ことは同じではありません。
ここまでは比較的分かりやすい話です。
でも、この話にはもう一つ面白いところがあります。
「走れ」ではなく「移動しろ」だったら?
条件を少し変えてみます。
「100mを9秒台で走れ」
ではなく、
「100mを9秒台で移動しろ」
だったらどうでしょう。
これなら僕にもできます。
自転車、オートバイ、自動車。
使えるものはいろいろあります。
僕自身が100mを9秒台で走れるようになる必要はありません。
必要なのは、
100m先へ9秒台で到達すること
だからです。
ここで重要なのは、
「何をするのか」ではなく、「何を達成したいのか」
だと思います。
「走る」という手段にこだわれば、僕には不可能です。
しかし目的が「100m先へ9秒台で移動すること」なら、選択肢は一気に増えます。
目的と手段を混同すると「無理」が増える
仕事でも、同じようなことがよくあります。
「自分にはできない」
「うちの会社には無理だ」
「そんな技術は持っていない」
「そんな人材はいない」
確かに、現在持っている能力だけを見れば、その通りなのかもしれません。
でも、一度考えてみる必要があります。
本当の目的は何なのか。
そして、
その目的を達成する方法は、本当にそれしかないのか。
100mを9秒台で「走る」必要がなければ、自動車を使えばいい。
同じように、自社ですべてを開発する必要がなければ、外部のサービスを利用すればいい。
自分で専門知識を身につける必要がなければ、その知識を持った人に協力してもらえばいい。
人間が何時間もかけて行う必要がなければ、コンピュータに任せればいい。
目的と手段を切り離して考えると、それまで「無理」だったものが、突然「できる」に変わることがあります。
必要な「アイテム」を探す
ゲームに例えると分かりやすいかもしれません。
ゲームでは、自分の能力だけで敵を倒すとは限りません。
武器を手に入れる。
防具を装備する。
仲間を増やす。
特殊なアイテムを見つける。
乗り物を手に入れる。
それによって、それまで勝てなかった相手にも勝てるようになります。
現実の世界も、意外と似ています。
目的を達成するために必要なリソースを探し、それを使う。
知識かもしれません。
人材かもしれません。
資金かもしれません。
設備かもしれません。
ネットワークかもしれません。
そして今なら、
AIかもしれません。
自分自身の能力だけで勝負する必要はないのです。
必要な「アイテム」を見つけ、それを組み合わせることができれば、それまで不可能だったことも可能になります。
それが結果として、大きな差になることもあります。
AIは、とてつもなく強力な「アイテム」かもしれない
そして今、僕たちが使えるアイテムが急激に増えています。
代表的なのがAIです。
文章を書く。
翻訳する。
情報を整理する。
画像を作る。
プログラムを書く。
大量のデータを分析する。
これまで専門的な能力や多くの時間が必要だったことを、AIが補助してくれるようになりました。
さらにAIだけではありません。
ロボットが現実世界での作業を担い、衛星が地球規模の情報を集める。
通信技術が進化すれば、離れた場所にあるコンピュータやロボットも利用できます。
AI、ロボット、通信、衛星。
これらが組み合わさっていけば、人間が利用できる「アイテム」はさらに増えていくでしょう。
「自分の物差し」そのものが変わる時代
高校時代に僕が親友へ言った、
「自分の物差しで測るな」
という言葉。
当時は、人それぞれ能力が違うという程度の意味だったと思います。
でも今は、少し違って見えます。
これからは、
自分の能力だけを基準にして「できる・できない」を判断すること自体が、あまり意味を持たなくなるのかもしれません。
AIを使えばできる。
ロボットを使えばできる。
世界中の専門家とつながればできる。
衛星から情報を得ればできる。
今は存在しない技術でも、数年後には普通に使えるようになっているかもしれません。
そう考えると、僕たちが持っている「物差し」そのものが、これからどんどん変わっていくのでしょう。
「無理」と言う前に、目的を考えてみる
もちろん、世の中には本当にできないこともあります。
しかし、
「それは無理だ」
と結論を出す前に、一度だけ考えてみてもいいと思います。
目的は何なのか。
その方法でなければならないのか。
使えるアイテムは他にないのか。
そして、
自分の物差しだけで測っていないだろうか。
100mを9秒台で走ることは、僕にはできません。
でも100mを9秒台で移動することならできる。
目的を見失わず、必要なアイテムを見つけることができれば、人間ができることはまだまだ増えていくはずです。
AI、ロボット、衛星、そしてこれから登場する新しい技術。
僕が高校生だった頃には想像もできなかった「アイテム」が、今では普通に使えるようになっています。
これから10年、20年。
僕たちの物差しは、いったいどこまで変わるのでしょう。
そう考えると、
本当に楽しみな時代が来ています。


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