LinguaWriterが目指すもの|AIを「使いこなす」必要がない世界へ

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ここまで6回にわたって、LinguaWriterについて紹介してきました。

第1回では、生成AIを使うときに立ちはだかる「プロンプト」という壁。

第2回では、プロンプトを書く代わりに「誰に書いてもらうか」を選ぶライティングプロフィール。

第3回では、そのプロフィールを探すためのLinguaWriter Portal。

第4回では、ブラウザだけで使えるLinguaWriter Web β版。

第5回では、Web版とアプリ版の違い。

第6回では、独自プロフィール、音声入力、音声変換辞書、文書複製などを使って、自分専用のAIライティング環境を作る方法を紹介しました。

最終回となる今回は、機能の話から少し離れたいと思います。

LinguaWriterを作りながら、ずっと考えてきたことがあります。

それは、

「AIを使いこなす」という言葉そのものが、いつか不要になるのではないか。

ということです。

私たちは昔、コンピュータを「使いこなす」必要があった

今では、子どもでもスマートフォンを使います。

写真を撮る。
メッセージを送る。
動画を見る。
地図を見る。
買い物をする。

そのとき、スマートフォンの内部で何が動いているのかを考える人はほとんどいません。

CPUがどのように処理しているのか。

OSがどのようにアプリを管理しているのか。

通信がどんなプロトコルで行われているのか。

知らなくても使えます。

しかし、昔のコンピュータはそうではありませんでした。

コンピュータを使うには、ある程度コンピュータのルールを覚える必要がありました。

コマンドを入力する。

ファイルの場所を指定する。

決められた操作方法を覚える。

つまり、

人間がコンピュータに合わせていた。

ということです。

GUIがコンピュータを特別なものではなくした

その状況を大きく変えたのがGUIでした。

文字で命令を入力しなくても、画面上のアイコンをクリックすれば操作できる。

ファイルを移動したければ、ドラッグする。

印刷したければ、「印刷」を選ぶ。

人間がコンピュータの命令体系を覚えなくても、目的から操作できるようになりました。

その後スマートフォンが登場し、この流れはさらに進みました。

多くの人にとって、コンピュータは「使うもの」というより、

目的を達成するために、そこにある道具

になりました。

では、今の生成AIはどの段階なのか

ChatGPTをはじめとする生成AIは、驚くほど高性能になりました。

文章を書く。

要約する。

翻訳する。

アイデアを考える。

プログラムを書く。

画像を作る。

以前なら人間が時間をかけていた作業を、AIが短時間で支援してくれます。

しかし、その一方でよく聞く言葉があります。

「AIを使いこなすには、プロンプトが重要です」

もちろん間違いではありません。

適切な指示を出せば、AIの回答精度は上がります。

目的、条件、対象読者、出力形式などを具体的に伝えるほど、自分が欲しい結果に近づきます。

ただ、少し昔のコンピュータに似ているようにも感じます。

高性能な道具はある。しかし、それをうまく使うためには、人間が使い方を学ばなければならない。

現在の生成AIは、まだその段階にいるのかもしれません。

「プロンプトエンジニアリング」はずっと必要なのか

生成AIが登場してから、「プロンプトエンジニアリング」という言葉も広く知られるようになりました。

AIからより良い回答を引き出すために、どのように指示すればいいのかを考える技術です。

これは現在、とても有効です。

私自身もAIを使うときには、目的に応じて指示の仕方を考えます。

しかし私は、

これが永遠に必要な技術なのだろうか。

とも思います。

コンピュータを使うために、すべての人がコマンドを覚える必要がなくなったように、

生成AIを使うために、すべての人が高度なプロンプト技術を身につける必要もなくなっていくのではないでしょうか。

普通の人は「AIを使いたい」のではない

そもそも、多くの人が本当にやりたいことは「AIを使うこと」でしょうか。

おそらく違います。

メールを書きたい。

ブログを書きたい。

旅行の計画を立てたい。

写真を整理したい。

会議をまとめたい。

仕事を効率化したい。

やりたいことが先にあり、その手段としてAIがあります。

ところが、

「まずプロンプトを書いてください」

となった瞬間、利用者はAIそのものを意識しなければならなくなります。

本当はブログを書きたいだけなのに、AIへの命令方法を考える。

本当はメールを書きたいだけなのに、「どういうプロンプトにすればいいか」と悩む。

少し逆転しているようにも感じます。

AIを意識せずにAIを使う

私は、AIが本当に社会へ浸透するのは、

人々が「AIを使っている」と意識しなくなったとき

なのではないかと思っています。

スマートフォンで写真を撮るとき、内部の画像処理技術を意識しません。

地図アプリで目的地を検索するとき、経路探索アルゴリズムを考えません。

検索エンジンを使うたびに、その仕組みを学ぶ人もいません。

同じように、

「文章を書きたい」

と思ったときに、AIのことを細かく考えなくても文章作成を支援してくれる。

私は、そういう方向へ進むと思っています。

LinguaWriterで試した「プロフィールを選ぶ」という方法

LinguaWriterは、その未来に対する一つの試みです。

複雑なプロンプトを書く代わりに、

「誰に書いてもらうか」を選ぶ。

そのためにライティングプロフィールという仕組みを作りました。

SEO記事を書きたいなら、それが得意なプロフィールを選ぶ。

SNS投稿なら、SNS向けのプロフィールを選ぶ。

仕事で自分らしい文章を書きたいなら、自分自身のプロフィールを作る。

そして利用者は、

  • テーマ
  • 要点
  • 結論
  • 今回だけ必要な追加指示

を伝えます。

できるだけ「AIにどう命令するか」を考えなくても使える形にしたかったからです。

音声入力も同じ考え方から生まれた

アプリ版に音声入力を用意したのも、同じ理由です。

スマートフォンで長い文章を入力するのは大変です。

それなら、

「今日はこういうことを書きたい」

と話せばいい。

考えが完全に整理されていなくても構いません。

テーマ、要点、結論をそれぞれ話し、文章として整理するところをAIに手伝ってもらう。

私はその方が、人間にとって自然だと思います。

人間が機械の入力方法に合わせるのではなく、機械の側が人間の行動に近づいていく。

これもコンピュータの歴史が歩んできた方向ではないでしょうか。

AIは「仕事を奪う存在」だけではない

AIについて語られるとき、

「AIによって仕事がなくなる」

という話題がよく出ます。

もちろん、AIによって大きく変わる仕事はあるでしょう。

今まで人間が行っていた作業の一部が、自動化されることも増えていくと思います。

しかしAIには、もう一つの側面があります。

今までできなかったことを、一人でもできるようにする。

という側面です。

文章を書くのが苦手な人でも、自分の考えを文章にできる。

専門的な内容を、一般の人に分かりやすく説明できる。

小さな会社でも、大企業のような文章制作を行える。

一人で仕事をしている人でも、複数の「書き手」を持つことができる。

私は、この方向にも大きな可能性があると思っています。

人間の役割は「文章を書くこと」から「何を伝えるか」へ

AIが文章を書けるようになると、

「では人間は何をするのか」

という疑問も出てきます。

私は、人間の役割がなくなるとは考えていません。

むしろ役割が変わっていくのだと思います。

言葉を一文字ずつ入力することよりも、

何を伝えたいのか。

誰に伝えたいのか。

なぜそれを伝えたいのか。

最終的に何を判断するのか。

こうした部分の重要性が高まります。

AIが文章を作ったとしても、

「この内容で本当にいいのか」

と判断するのは人間です。

AIは文章を作れます。

しかし、その文章を通して何を実現したいのかを決めるのは人間です。

AIに任せることと、人間が考えなくなることは違う

AIが便利になると、

「人間が考えなくなるのでは?」

という心配もあります。

これは重要な問題だと思います。

しかし私は、

AIに文章化を任せることと、考えることをAIに任せることは同じではない

と考えています。

自分の意見がなければ、AIがきれいな文章を作っても中身は薄くなります。

体験がなければ、体験談を書くことはできません。

判断する基準がなければ、AIの回答が正しいかどうかも分かりません。

だからこそ、AIが発達するほど、

人間は「何を考えるか」に集中する必要がある。

私はそう思っています。

プロンプトを書く時代は、本当に終わるのか

このシリーズでは何度も、

「プロンプトを書く時代から、プロフィールを選ぶ時代へ」

という言葉を使ってきました。

もちろん、明日からプロンプトが不要になるわけではありません。

高度な用途では、これからも詳細な指示が必要でしょう。

AIを深く活用する人にとって、プロンプトを理解することには大きな価値があります。

しかし一般の利用者まで、全員がそれを学ばなければAIを使えない世界である必要はありません。

用途を選ぶ。

プロフィールを選ぶ。

必要なことを話す。

場合によっては、AIの方から必要な情報を聞いてくる。

将来は、そうした形がもっと増えていくのではないでしょうか。

LinguaWriterは、その途中にある小さな実験

LinguaWriterが、AIライティングの完成形だとは思っていません。

現在の仕組みにも改善すべき点はあります。

Web版もまだβ版です。

ライティングプロフィールも、これからさらに増やし、改善していきたいと考えています。

しかし、LinguaWriterを作ることで一つ試したかったことがあります。

「AIを使う人に、AIの専門家になってもらわなくてもいい仕組みを作れるか」

ということです。

プロンプトを考えなくてもいい。

文章を最初から組み立てなくてもいい。

思いついたことを話してもいい。

書き手を選んでもいい。

自分専用の書き手を作ってもいい。

AIへの入口は、もっと簡単であっていいと思っています。

AIを「使いこなす人」だけのものにしない

新しい技術が登場すると、最初は一部の詳しい人が使います。

やがて道具が改善され、専門知識がなくても使えるようになります。

コンピュータもそうでした。

インターネットもそうでした。

スマートフォンもそうでした。

生成AIも同じ道を歩んでいくのではないでしょうか。

今は、

「AIを使いこなせる人」

が注目されています。

しかし本当にAIが普及した未来では、

「AIを使いこなしている」という意識そのものがなくなっているかもしれません。

必要なときに、必要な形でAIが支援する。

利用者はAIの存在よりも、自分がやりたいことに集中する。

そんな時代になれば、AIはようやく特別な技術ではなく、本当の意味で日常の道具になるのだと思います。

「何を書かせるか」より、「何を伝えたいか」

LinguaWriterを作りながら、最終的に行き着いたのは、とても単純なことでした。

AIで文章を書くときに一番大切なのは、

「どんなプロンプトを書くか」

ではありません。

自分は何を伝えたいのか。

そこだと思います。

伝えたいことがあれば、文章を整える部分はAIが助けてくれます。

書き方に迷ったら、ライティングプロフィールを選ぶこともできます。

思いついたことを音声で伝えてもいい。

一度作った文章を別の用途へ展開してもいい。

AIは人間の代わりに生きるものではありません。

人間が考えたことを、より簡単に形にするための道具。

LinguaWriterも、そんな道具の一つになれればと思っています。

全7回を終えて

今回のシリーズでは、LinguaWriterという一つのアプリの紹介から始まりました。

しかし振り返ってみると、書きたかったのはアプリの機能だけではなかったように思います。

人間とAIは、これからどんな関係になっていくのか。

その中で、人間は何を考え、AIには何を任せるのか。

LinguaWriterは、その答えを探しながら作っている一つの試みです。

まだ完成形ではありません。

だからこそ、これからどのように変わっていくのか、私自身も楽しみにしています。

そしていつか、

「AIを使いこなす」という言葉を、誰も使わなくなる日。

そんな時代が来るのかもしれません。


この記事が、どこかで
「ためになるかもしれない」と思っていただけたら嬉しいです。

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